夏が消えてゆく
雪が降ってるのに傘をささないなんて、風邪ひきたいですって言ってるようなものなのに、それでもお互いの傘の半径分の長さを足した距離すらもどかしく感じるのはお互い様のようだった。
「 ねー夏稀 」
「 なーに 」
「 私たちって、そもそも付き合ってたっけ? 」
ゆるり、と笑顔を向けて、繋がれていた手を離して。
私は1歩前に出て振り返った。
賭けた。
50%の確率に、賭けた。
付き合っているか、そうでないか。
それだけの質問に祈るように、でもなんでもないふうにペラっと笑って夏稀をじっと見て、そして、3秒後に逸らされた。
「 …… 付き合ってないけど、 」
付き合ってないけど、
「 ふゆは俺の大切 」
これは、賭けに負けたことになるのだろうか。
それとも大切という称号に嘘はないから負けてはいないのだろうか。
大切という言葉は彼女よりももっと強く執着されているということ?
「 ずるいねぇ、夏稀は 」
ほぅ、と息を吐き出してもういちど、ゆるり、私が笑みを向けると「 知ってただろ 」と夏希は歩き出した。