夏が消えてゆく
「 夏稀から、俺は高校を卒業しないけど、ふゆにそのことを直接伝えるのはこわいから、伝えずにきっといなくなる。もしふゆが泣いてたら、愁人が慰めてやって。 」
久しぶりにきく ふゆ という呼び方も、夏稀の声じゃないからなんだかちぐはぐに聞こえてしまう自分を、改めて末期だと、そう思う。
いつからそんなこと考えていたの、なんで言ってくれなかったの、なんでそばにいてくれないの。
今聞いたところでどうしようもない事ばかりが頭に浮かぶ。
「 夏稀がここから出ていくことを聞いた時、俺なんて思ったと思う 」
「 …… わかんない 」
「 よかった 」
「 は…… 」
「 よかったって、思ったんだよ 」
最低だろ、俺。なんて言いながらもう一度愁人はハッと乾いた笑みを零した。
「 本当は、あの時…… この村出て働くって聞いた時、行くなって言うべきだったんだ…… 」
「 愁人……? 」
「 そうしたら今頃夏希はここに眠ってないし、俺らみたいに大学生になって街に出て笑ってたかもしれないし、なにより …… 」
冬華は笑ってたろ?
バカだった。幼すぎた。
夏稀がいなくなって、愁人は今まで以上に私に話しかけるようになった。
放課後になれば、街に遊びに行こうと誘ってくれたり、テスト勉強もよく見てくれるようになった。
佐藤だってそうだ。
全然面白くなったけど、今思えば授業中ちょっとでも面白くしようと頑張ってくれていた。
…… 面白くなかったけど。
── …… バカだ。
バカすぎだ。
「 しゅ、と……っ 」
「 ごめんな 」