夏が消えてゆく
涙が次から次に溢れて止まらない。
さァっと吹いた風が私のポニーテールを揺らして、前髪が乱れてふいに柊登の顔が見えなくなった。
愁人は、夏稀の父親が亡くなって、片親だったことを村の人からよく思われていないことに気づいていた。その中に、多額の借金が残っているのでは、と本当か嘘かも分からない噂が混ざっていることにも。
後ろ指をさされて夏稀と菜月の家族がしんどい思いをすることを、村から出ることで逃れられるなら、よかった、と。
村から逃れられたところで夏稀がしあわせになれるわけじゃないのに、それなのに。
「 最低だ ……おれ、っ 」
お墓に背を向けて下を向いて静かに涙を流す愁人に、呆然と立ち尽くすしかなかった。
3年前、涙が枯れるまで泣いたはずだった。
3年間、夏稀から引っ越すことを聞いた時から、愁人はどれだけの罪悪感と苦しみの中にいたのだろうか。
夏稀がなくなったと聞いた時、唖然とする私の前で愁人は ごめん と過呼吸になるほど泣いていた。
葬儀に出れる精神状態じゃない私の代わりに出てくれた愁人は一体どんな気持ちで。
夏稀がいなくなってから気丈に振舞ってくれていた愁人を考えると、涙が溢れた。