夏が消えてゆく
しばらく泣いて、私たちは立ち上がった。
瞼も重くて頭もガンガンするけど、それでも、来た時よりかはいくらか心が軽かった。
「 はっ、目ェ真っ赤。 」
「 愁人こそ 」
泣きすぎて鼻声で、ぼーっとする頭の中愁人は不意にお墓にコツンと拳をぶつけた。
「 えっ 」
お墓に拳をぶつけるのなんて愁人くらいだよほんと。謎に清々しい表情だし。傍から見れば変な人だよ、なんて思いながら私も止めることはしなかった。
「 俺らがそっち行くまではこっち戻ってくんじゃねーぞ。 」
俺らもこっちで寿命精一杯生きてやるから。
お前もそっちの生活せいぜい謳歌しろよ。
ほら、また
「 なつ…消えちゃう…っ 」
「 はっ、消えねーよ。てか 」
消せねーよ、こんなん。
俺らが夏稀を忘れるその時までは
その表情にくしゃり、再び表情を崩せば帰るか、という愁人の言葉に素直に頷けた。