夏が消えてゆく
それからの2年間は酷かった。
朝は新聞配達して、お昼は時給のいいバイトをかけ持ちして、夜もできるだけ働いた。
睡眠時間なんて、あるわけなかった。
ご飯も賄いで何とかしていた。
毎日ボロアパートに帰るのは30分の睡眠のため。
ふゆに見られたらまた『 ボロ民家 』なんて言われるんだろう。だけど戻りたい、なんて感情はとうの昔に捨ててきた。
母も内職を始めて、なんとか生活ができていた。
それでもやっぱり、
「 ふゆ、 」
ふとした瞬間にかつて『 彼女 』と呼んだ存在を思い出しては情けなく泣きそうになってきた。
ばかやろう、ほんと、あいつのせいだ。
「 ふゆの、せい、だ。 」
寒くて、寒くて、いつもよりかなり心臓の脈が早くて苦しくて。
ついには立っていることも難しくなって。
「 ……っ、 」
人間の、限界を感じた。