夏が消えてゆく
ああ、死ぬんだな。
素直にそう思った。
人間の死なんて、こんなものなのかな、なんて思えるほど客観視できた。
最期、人生の振り返るような走馬灯みたいなのが見えるって、あれ嘘なんだな、なんて客観視しているじぶんもいて。
心臓が苦しいのに、苦しくて仕方が無いのに、それて頭に浮かぶのはたったひとり
「 ふゆ、っ 」
いつかの未来、一緒になりたかった君のこと。
ああダメだ、立っていられない。
電柱を使って立っていたのにそれもできなくて。
伸ばした手は宙を切った。
はっ、情けねー。
もう隣で笑うことはなくなった君に、たったひとつ願うことがあるならば。
君に幸あれ。
いつかにも願ったそれだけだ。
「 もうちょっと生きたかったなぁ……っ、 」
朦朧とする意識の中、ふゆが太陽のように笑った。
最後に見上げた朝の光は、それはそれは、
───── …… 美しかった 。