夏が消えてゆく
私が通う高校はちょっとおんぼろで、校舎のいたるところにガタが来ていることは一目瞭然。
北風が隙間から入り込んでヒューヒュー言うもんだから寒くて寒くてしょうがない。
山奥にぽつんとある村の、真ん中に静かにそびえ立っている。
「 さむ… 」
「 愁人、寒さに弱すぎ 」
クラスメイトは物心つく前から一緒だった2人の幼なじみ。先生はたったの1人だけ。
先輩も、後輩も、私にとっては未知の生物で。
「 おはー 」
「 うぃーっす 」
「 ……カイロ 」
それでも2人の幼なじみがいてくれれば寂しくないか、なんて考えていた。
「 さっむいねえ 」
「 鼻水垂れてる汚い、お前ほんとに女子? 」
そういいながら、夏稀は学ランの右のポケットからティッシュを取り出して
「 ぶへぇっ 」
「 もっかい聞くけどお前ほんとに女子だよな? 」
急に押し付けられたティッシュに変な声が出た私をちょっと引いた目で夏稀が見てくる。
そんな何気ない日常がここにはあった。