夏が消えてゆく



「 なんだふゆ、昨日遅くまでゲームしてたんだろ 」

「 べっつにー!朝ごはん食べすぎて眠いだけですー!」




さっきの違和感は嘘だったのかと思えてしまうほど、いつも通りの会話。


佐藤のばかやろー。
わけわかんない意味深な空気出しやがって。

朝から無駄にぐるぐる考えちゃったじゃん、まだ宿題も終わってないのにさ。



佐藤のばかやろー。
無駄に心臓バクバクしちゃったじゃないか。

体力の無駄に使っちゃったじゃないか。



そう思いながらも、胸のつっかえが完全になくなることはなかった。



・・・



朝のもやもやも空腹感にかき消されつつあった3時間目。
数学の授業中。



「 ね、夏稀 」

「 なに? 」

「 いいこと思いついた! 」



集中力はとうの昔に消え去った私は、ふいに思いついたアイディアを誰かに知らせるべく、右隣に座っていた夏稀の席をとんとんと叩く。


いいこと思いついたってふゆが言う時は大抵いいことじゃないだのブツブツ呟きながらシャーペンの芯を出したりしまったり。


おいおい、失礼すぎるだろうよ、お兄さん。
とってもいい事なのにそんなこと言っていいのかい。


なんて、にやり。


「 星!星見にいこう! 」

「 はぁ? 」

「 しーっ 」



ちょっぴり大きな声を出した夏稀に私はビックリして、左隣で眠っていた愁人が目を覚まして、佐藤が睨んだ。


ほら言わんこっちゃない佐藤に睨まれた



「 誰かひとりでも授業聞く気になれよ、全く… 」


誰も聞いてない授業なんて、佐藤可哀想。って前に言ったことがあったっけ。

そしたらじゃあ聞けよって叩かれた気がする。
体罰っていうんだよ、それ。




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