夏が消えてゆく



「 だから、星!見に行こ? 」


また唐突な…と頭を抱えてシャーペンの芯をカチカチ。


髪の毛をクシャッとしてちょっと悩んだ仕草を見せて



「 ごめん俺今日無理だ、愁人誘えよ 」



なんと。

断られてしまった。


普段なら絶対断らないのに。




「 おい二人共そろそろ授業戻ってきてくれ自分が惨めになってきた 」



佐藤の悲痛な叫びに2人でクスリと笑いながら前を向く。


佐藤、奇遇だな、私も今惨めな気分だ。なんて聞こえもしない同調に窓の外を見て



「 あ、雪。 」

「 ほんとだ。冷えるな…ってだからお前ちょっとは授業聞く努力をしろよ… 」

「 生徒に向かってお前はどうかと思いますよ、せんせー?」



『 ガキか 』と鼻で笑われて、ムカつくーと一言零す。

右隣の席でくすくす笑う夏稀に、笑うなーっと拳を振り上げる動作をするとごめんごめん、だなんて。

本当は星、見に行きたかったのに、そんな小さな本音を飲み込んで笑って見せた。


ああまただ、なにか、とてつもなく大きな不安に飲み込まれそうになる。


「 しゅーと、 」

「 …… 」


左隣の席の住人に声をかけても気持ちよく夢の世界に落ちているのだから届くわけがなかった。




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