線香花火が、長く、続くように
*4* 金魚掬い
夏休みに入った。
部員達と一緒に打上げ花火の写真撮影に挑戦しようという話になり、
皆で花火大会に行くことになった。
「浴衣姿の後ろ姿と屋台とか、ベタだけど映えるよね!」
という話になり、
当日は、女子は浴衣、男子は浴衣か作務衣で集合した。
「それぞれ、食べ歩きでもしながら写真撮って、20時前には屋台の列の最後にある、焼きとうもろこしの店横辺りに集合で!」
引退した3年生から指名され、新しく部長を務めることになった和輝が部員達にそう声をかけると、
メンバーは自然とバラけ、各々撮影を始めた。
杏奈も同級生の友人達と写真を撮り合った。
撮った写真を確認しようと一眼レフの画面を覗いていると「いい写真、撮れた?」という声が頭の上の方から聞こえてきた。
見上げると、作務衣姿の和輝が、杏奈を見下ろしていた。
「あ…はい。これとか、いい感じに…」
「どれ?…お、いいね!肉眼で見るのと同じくらい、提灯の色合いがよくて。しっかり撮れてる。」
にっこりと笑いかけてくれた和輝の笑顔に、体が勝手に反応して熱を帯びる。
ドキドキし過ぎて返す言葉を見つけられずにいると和輝が「あ。」と呟いてから話を続けた。
「立花。よかったら被写体になってよ。」
突然の申し出に、杏奈は目を見開いて「え!?」と声を上げ、驚いた。
「わ、私なんかで大丈夫なんですか?」
「私なんか、なんて言わないのー。俺が立花を撮りたいの!」
そう言うと和輝は杏奈の返事も待たずに指示した。
「じゃ、とりあえずそこのお店で金魚掬い、して。」
「と、唐突…!」
戸惑う杏奈に、和輝が「いいからいいから」と言って金魚すくいの店の方へ歩くよう促す。