線香花火が、長く、続くように

ちょうど客はおらず、2つある水槽のうち右側の水槽を選んだ。


「2人分、お願いします。」

そう言って和輝がお店の人に2人分のお金を渡す。


「センパイもするんですか!?」

「うん。あ、もちろん、ちゃんと撮影もするよ?」


にこやかに笑いながら、
店の人から受け取ったポイを「はい」と杏奈に渡す。

突然の流れについていけず戸惑っていると、
しゃがんで金魚を眺めていた和輝に、下から見上げられた。


「立花、どの金魚狙う?」

「えっと…」

遠慮がちに和輝の横にしゃがむと、
戯れながら優雅に泳ぐ金魚たちを眺め、杏奈は「うーん…」と唸った。



すると。


パシャッ



「あっ!」

「お。いい感じに横顔撮れた。」


スキを見て杏奈の写真を撮った和輝は、平然と一眼レフの画面を眺めている。


「センパイ…!今の私、絶対変な顔してましたよね?」

「そんなことない。可愛いよ。」

「かわ…!?」


ボボッと顔が熱くなるのを感じて、思わずバッ!と目線をそらした。


──不意打ちで褒めるの、やめてーー!


心の中でそう叫んだ杏奈の横で、和輝は
「ごめんごめん。真剣に悩んでたのに、邪魔したね。」と、謝りながらも笑っている。


気を取り直して、改めて2人で金魚を掬ってみたが、結局1匹も取れず。


和輝が「あちゃー。もう破けた!むずっ!」と言いながら笑う横で杏奈も笑いながら、
まるでデートしているような気分になりドキドキした。

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