線香花火が、長く、続くように
金魚掬いをしている間に他の部員達を見失ったので、結局2人で出店を見て回ることにした。
2人でたこ焼きを食べたり、射的や的当て等のゲームをしたりしながら、合間で写真も撮った。
本当に楽しくて、あっという間に時間が過ぎていく。
「そろそろ集合場所に向かうか。」
スマホで時間を確認しながら、和輝が杏奈にそう声をかけた。
「そう…ですね。」
2人でいる時間が名残惜しいと感じながらも、
集合場所に向かって歩き始めた和輝の後ろについて歩く。
──センパイと、まだ2人で過ごしたいよ…。
和輝の広い背中を見つめながら、ドキドキがどうにも収まりきれないのを感じた。
──やっぱり…好き。
そう思った瞬間、思わず和輝が着ている作務衣の端を掴んだ。
「お。どうしたの……立花?」
振り向いた和輝は、杏奈の顔を見て少し目を大きくした。
──どうしよ。今の私の顔、すごく真っ赤だ…。
顔どころか全身が熱を帯びているのを感じ、恥ずかしい、と思いながらも、
ここまで来たら、もう勢いに身を任せるしかなかった。
目を真ん丸にしたままの和輝を見つめながら、杏奈は思い切って思いを告げた。
「山下センパイのことが…好きです。」
…言った。
ついに言ってしまった。
和輝の反応は…
──あ…。駄目かも。
和輝が困惑した表情を浮かべているのを見て、悟った。
杏奈と目を合わせないようにしているのも伝わってきた。
「立花…ごめん。俺…」
和輝が気まずそうにそう呟いた瞬間、ぐらっと視界が揺らいだ。
「…私の方こそ、困らせてすみませんでした…!」
2人きりでいることを、和輝は嫌がっていない。
だからもしかしたら…なんて、
少しでも思い上がった自分が恥ずかしかった。
ペコッと頭を下げ、集合場所とは反対方向に向かって急ぎ足で逃げた。