線香花火が、長く、続くように
「どうしても家族全員で東京に行かないといけない状況になってしまって、夏休みに入ってすぐ、バタバタと転校準備とか進めてました。
転入試験も無事合格したので、夏休みが明ける直前くらいに地元を出て、東京に引っ越します。
みんなに伝えるのが遅くなってしまって、申し訳ないです。」
「後任は、今副部長をしてくれている柳瀬です。新しい副部長は、1年の松原が引き受けてくれることになりました!」
「写真部のメンバーと過ごす時間は、ホントに楽しかったです!みんな、お世話になりました!」
ざわつく部員達の前で、和輝は明るい表情で、最後にそう締めくくると、深々と頭を下げた。
途端に、何人かの部員から取り囲まれ、質問攻めにあう和輝。
その様子を、杏奈は遠巻きにボーッと眺めた。
和輝が転校する。
突然伝えられた事実を、まだ上手く受け止められない。
和輝に質問攻めしている部員達とは別に「まさか部長が転校だなんてねー」と話しながら、バーベキューの片付けを進めるメンバーに混じって、杏奈も片付け係に徹した。
フラれた立場ながら、
和輝とは同じ写真部のメンバーとしてこれからも一緒に過ごしたいと思っていた。
気持ちを切り替えようと頑張っていたのに。
和輝に対する好意を、部長と部員として過ごすことで少しずつ昇華させて行こうと思っていたのに、
あまりの急展開に、気持ちの整理のつけようがない。
急に梯子を外されたような、そんな気持ちになっていた。