線香花火が、長く、続くように
駐車されている車や植木がある、他の部員達からは死角になっているスペースで立ち止まる。
「ここなら、ろうそくの火も風で消えないだろうし、いいかな。」
「…ですね。」
「線香花火とこっちの手持ち花火、どっちからしようか。」
「んー…線香花火は、最後がいいです。」
「オッケー。じゃ、こっちからやるかー。」
小さなろうそくにライターで火をつける和輝。
火が灯ったろうそくの小さな炎が、
暗闇の中の和輝の顔をゆらゆらと照らし出す。
遠くから聞こえる部員達の笑い声が、逆にこちらの静けさを強調していた。
気まずさを感じているのは、杏奈だけだろうか。
和輝が追加で持ってきた花火を2人で楽しんでいる間も、なんとなくぎこちない感じがした。
──センパイ、なんで誘ってくれたんだろ。
フッた側として、フラれた側の杏奈を気遣っているのか。
誘ってくれた理由を確認したくても、なかなか勇気が出ないまま、最後に残しておいた線香花火をすることになった。
2人並んで線香花火の先をろうそくの炎に近づけながら言葉を交わす。
「線香花火って、なんかいいよな。」
「…わかります。すぐに消えてしまいそうな儚さがあるのに、控えめな華やかさがあるところが、私は好きですね。」
「…立花の言葉のチョイスって、なんかいいよな。」
「え?そうですか?」
2人の線香花火の先に、同時に火がついたのを確認してから、互いにそっと、自分の目の前に移動させる。
「みんなの写真を見ながら感想を言う時の立花の表現がすごくいいなって前から思ってた。
語彙力あるし、何より言葉選びのセンスがあるよな。」
「そう…でしょうか。ありがとうございます。」
「…うん」