線香花火が、長く、続くように
*2* 出会い
高校の入学式の日
部活の勧誘で外が賑やかに盛り上がっている頃
新入生の立花杏奈は、校舎の中を散策していた。
──結構広いなぁ。
明日から毎日通う学校。
ちょっと早めに見ておきたくなって散策してみたけど…
──あれ。こっちから来たっけ?それともこっち??
ぐるぐる回っているうちに、ある教室に辿り着いた。
いや、教室というより…
──すごい。展覧会?
教室の黒板と並行に、何本もの紐が教室の中を横断するように渡してあって、
そこにたくさんの写真がダブルクリップで留めてあった。
──誰もいないし、ちょっとくらい覗いていってもいいよね?
なんとなく、足音を立てちゃいけない気がして、
そろそろと歩みを進め、教室に入る。
全部で100枚くらいある写真たち。
1つ1つ、ゆっくりと眺めていく。
空の写真
花の写真
動物の写真
カップルの写真…
被写体が様々で、見ていて飽きない。
──色合いもすごい、素敵。こっちはビビットな感じで、こっちはセピアで…。
ふと、1枚の写真に目を奪われた。
吹き硝子をしている老人が1人
一目で、プロのガラス職人だとわかった。
──真剣な目つき。コップを作ろうとしてるのかな?今にも硝子が膨らんでいきそうな空気感が伝わってくるな…。