線香花火が、長く、続くように
パチパチと音を立てて、静かに、華やかに火花を散らす線香花火を、2人で見つめる。
だんだんと勢いを弱め、火種がジリジリと小さな音を立て始めた。
「立花」
「はい?」
「この前は…ありがとな、告白してくれて。
嬉しかったよ。」
「…」
フラれましたけどね。なんて、内心思いながら、返す言葉が見つからず黙り込む形になってしまった。
「あの時、ちゃんと話せなかったから、今日ちゃんと伝えたくて。」
「もう…いいですよ。またフラれたような気分になっちゃうので…」
「俺も、立花のことが好きだよ。」
「え…?」
杏奈が持っていた線香花火の火種が、地面に落ちた。
時間差で和輝の方の火種も、地面に落ちる。
その様子を見つめながら、杏奈はフリーズした。
頭の中が混乱する。
地面に落ちて黒い焦げと化した線香花火の火種を見つめながら、杏奈は頭の中の整理をする。
「え…えぇ?だって、この前告白した時、ごめんってセンパイ言って…」
「や、その…あの『ごめん』は、東京に行くのが決まってすぐで自分の中でも整理がついてなかったから…。
付き合ったとしても遠距離になるし、と思って。
急だったから、なんて返せばいいか分からなくて、咄嗟に出た言葉が『ごめん』だっただけ。」
ろうそくの炎に照らし出された和輝の表情は柔らかく、優しい。
杏奈を見つめる目も、優しかった。