線香花火が、長く、続くように
パシャパシャッ
和輝が首から下げていた一眼レフを杏奈に向け、シャッターを切った。
「あ!ちょっとセンパイ…!」
慌てる杏奈を他所に、和輝は一眼レフの画面で、たった今撮れた写真を確認している。
「おー、いいね。よくあの一瞬でよく撮れたな。さすが俺。腕がいいなぁ。」
和輝がわざとらしく、満足気にうんうん、と頷いていると、杏奈が「あっ!」と声を上げた。
杏奈が持っていた線香花火の火種も、落ちてしまったのだ。
「もー、落ちちゃったじゃないですかー!落ち着いて楽しみたかったのにー」
「ごめんごめん。線香花火、まだあっちに残ってるだろうから、また後で一緒にしよ。」
宥める和輝の横で、杏奈はしゃがんだまま、膝に顔を埋めた。
「線香花火もですけど…さっきの写真、不意打ちすぎて絶対変な顔だった…」と杏奈が沈んだ声で嘆く。
「いや?いい笑顔だったよ。」
「またそんな…。お世辞は要りませんって…。」
「そんなことない。可愛く撮れてたよ、俺の彼女。」
「なっ…!!」