線香花火が、長く、続くように

*6* 思い出の写真


2学期が始まった。

9月に入ったならもう少し秋めいても良さそうなのに、
残暑のせいで、まだ真夏のように暑い。


家に着き、顔の横を伝って流れ落ちてきた汗をタオルで軽く拭いながら、杏奈は郵便ポストの中を覗いてみた。

数枚のチラシが入っているのはいつものこと。

ただ今日は、それだけではないようで。 


──郵便?


父親か母親宛だろう、と思いながら手に取ると『立花杏奈様』の文字が。

まさか、と思いながら封筒をひっくり返してみると、『山下和輝』と書いてある。


嬉しくてテンションが上がる。


──毎日ラインで連絡取り合ってるのに、わざわざ手紙…?


何事だろうと、ドキドキしながら家の中に入り、
まだ誰もいないリビングで、ハサミを使って丁寧に開封した。


封筒から中身を取り出すと…

線香花火を持って、楽しそうに笑う、杏奈の写真。


便箋はないが、メモ用紙にメッセージが書いてあった。

『ほら、可愛く撮れてるだろ?』

メッセージの初っ端に書いてあるその言葉を読んで、思わずふふっと笑う。


その下にも、メッセージが続いている。


+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

杏奈とこれからも、ずっと一緒にいたい。

だから、遠慮なく俺に頼ってな。

遠距離で寂しい時もあるけど、
2人で工夫しながら過ごしていこ!

これからも、よろしく。
                和輝
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+


端的で、和輝らしいメッセージ。

メッセージを読んで、ふと、和輝に言われたことを思い出した。

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