線香花火が、長く、続くように
「偉そうに長々と語ってすみません!」
「…いや。いいよ、全然。」
そう言って彼はフッと笑った。
「すごくいい感想。この写真を撮った部員に伝えとくよ。」
そう言って、彼はパソコンがある机の方へ戻っていった。
「あ、あのっ!」
一眼レフからデータを取り出す準備をしている彼に向かって、声をかける。
「ん?」
「わ、私、立花杏奈といいます!本日入学しました、1年生です!名乗るのが遅れまして、申し訳ありませんっ!」
ペコーーっと頭を下げた杏奈を見て、「あ、俺も名乗るの忘れてた」と言って、彼はにっこり笑った。
「立花さん、ね。俺は2年の山下和輝。」
ヨロシク。と言った後、和輝はまたパソコンに向き直って、作業を再開した。
──山下…センパイ。
名前を教えてもらっただけなのに、なんだか世界がキラキラして見えたような気がした。
「あの…もう少し、写真…見て行ってもいいですか?」
「ん?あぁ、いいよ。
俺はここで作業するけど、見終わったら気にせず帰ってもらっても大丈夫だし。ごゆっくり。」
にこっと笑いかけて、また和輝はパソコンの画面に目線を戻した。
「…ありがとうございます。」
「ん。」
和輝が軽く頷いたのを確認すると、杏奈は写真の続きを眺めた。
時々チラッと和輝の方へ視線を向け、和輝の横顔を眺める。
一眼レフで撮った写真をパソコンの画面で真剣に確認する和輝。
空気感、話し方、声のトーン。
大人っぽい落ち着いた雰囲気がとても魅力的だと感じた。
誰もいない教室で、和輝と2人きり。
一瞬、この世界には2人しかいないんじゃないかと思うくらい、
居心地のいい、穏やかな空気が2人の間に流れているのを感じた。