線香花火が、長く、続くように
写真を満足するまで見た後、帰る前に和輝に声をかけると「よかったら、また写真見においでよ」と言われた。
社交辞令だと思いながらも、和輝からもらったその言葉が嬉しくて、度々、写真部の部室を訪れるようになった。
何度か足を運んでいるうちに部員とも顔見知りになり、自然と、入部する流れになった。
「カメラは部の予算で買ってるのもあるから、それ使ってもいいよ。」
扱いに慣れてきたら、自分好みのカメラ買えばいいし。と、和輝に言われ、部の一眼レフを使っているうちに、
少しずつではあるが、カメラの扱いも分かるようになってきた。
部員達と一緒に校内や校外を散策して、被写体を探すのも楽しかったし、
撮った写真のデータを加工して、スマホの待ち受け画面を自作したりする作業も楽しかった。
そして、何よりも…
──山下センパイ、素敵だな。
写真部のメンバーと過ごす時間ももちろん楽しかったが、
和輝と話す時間や、他の部員と話す和輝の横顔を見ている時間が楽しみになっている自分がいた。
副部長を務める和輝は、部員への気配りもスマートだし、話し合いの場でも、みんなが納得できるような結論に持っていくのが上手かった。
もしかしたら、初めて会ったあの瞬間から、和輝に惹かれていたのかもしれない。
そう思える程、彼への好意に気付くのに、時間はかからなかった。