初恋の始め方
教室を覗くと、すでにいくつかのグループがあちこちででき上がっている。
このクラスの子だけじゃなくて、他のクラスからやってきている子も輪の中に混じっているのか、元々の友達や知り合い同士での会話が盛り上がっている。
積極的に関わる気のない私には、しばらく誰が誰かを見分けるのは難しそう。
さっきまであい子のおかげで少しだけ軽やかだった気持ちも、教室に足を踏み入れる頃にはすっかり萎んでしまって、足取りは重たい。
3年間、ううん、まずは1年間。
とにかく、ひっそりと、目立たずにやり過ごせればいい。
「おはよー、小峰さん。と小林さん」
席に着くと私の隣の席にはもう高瀬くんがいて、当然のように声をかけられる。
「……お、はよう」
"ひっそりと目立たずに" が目標なのに、正反対の要素しかなさそうな隣人に、先行き不安でしかない。
しかも、男子。
緊急がピークに達した私の口から発せられた声は、たぶん掠れて震えていた。
さすがに不自然かも、と焦りと緊急で更に動作までぎこちなくなる。
どうしよう、周りの視線が気になる。