初恋の始め方
「何?ナンパのつもり?」
「何怒ってんの?褒めてんのに」
あい子の言葉に鋭さが加わる。
それも気にせず人懐こい笑みを見せる彼は、きっと友達が多いのだろうな、とその人柄の良さを思わせる。
でも空気は読めなさそう。
ただでさえお隣のお友達のせいで、昨日に続いて変に注目を集めてしまったというのに、これ以上騒ぎ立てないでほしい。
放っておいてほしいのに。
「おまえ、いきなり馴れなれしすぎだって」
私たちの不穏な様子を察したのか、高瀬くんが止めに入る。
「ごめん、こいつ俺の友達なんだけど……」
「ども!2組の橋本陽介でーす!よろしく」
「どーも」
高瀬くんの言葉を遮って自己紹介を始める彼の友達――元い橋本くんは、まさに "名は体を表す" という言葉がぴったりな人だ。
どこまでもマイペースな橋本くんに、バッグを乱雑に机に下ろしながら適当な返事をするあい子。
私はみんなに隠れるようにして、目の前の頭を抱えたくなる現実にそっと溜息を吐き出す。