初恋の始め方
しばらく担任の話に耳を傾けていると、ふ、と左側から感じる視線。
何気なく私も視線を向けると、ばちり、と隣の席の男の子のそれとぶつかった。
と、すぐに外される。
(……な、に……?)
特に意味はないのかもしれない。
たまたま目が合っただけかもしれない。
それでもなんだか意味があるような気がして、その瞬間、考えるよりも先に記憶の蓋が開いて、頭に浮かぶ、あの、光景、に。
どくん、と恐怖と緊張が私の体を駆け抜けた―――。
その気持ちの悪さに呼吸が小さく震える。
咄嗟に自分自身を慰めるように、ぎゅ、と瞼を閉じ両手を握りしめた。
「……みねさん、小峰さん?」
担任の声で、は、と視線を上げる。
前を見ると心配そうなあい子と目が合って、思わず笑みを作った。
そうだ、今はホームルーム中だったのだ。
ほんの少し冷静さを取り戻した私は、立ち上がり自己紹介を始めた。