初恋の始め方
……それから。
ホームルームは翌日からの説明を聞いたり、提出書類を集めたりで時間になると終わった。
私はといえば、ずっとさっきの感覚が消えない気がして、終始緊張していたのかなんだかどっと疲れた気がする。
配布されたばかりのプリントやらお知らせやらを真新しいバッグに片づけながら、早く帰りたい。
そう思っていると、
「小峰さん、」
いきなり呼ばれた名前に大袈裟に驚いた私は、手にしていたプリントを危うくぶちまけそうになった。
「体調悪そうだけど、大丈夫?」
声のした方を振り返れば、先ほど視線を向けてきた男の子。
私の様子が気になったのか、声をかけてきたようだ。
挙動不審な私に心配そうな表情を向ける彼に、普通なら良い人だと思うのだろうけれど、その裏を疑ってしまう私はきっと心が歪んでいる。
「……え、あ、……だい、じょう、ぶ」
「そ?ならよかった」
ちらりとあい子の方を窺うと、彼女は彼女で隣の席の女の子と話が弾んでいるようだ。