花火に目がくらんでオチテいく
時計を見ると、11時。



「パパとママはまだ家にいるの?」

「10時の新幹線だからもういないよー」

「そう」



両親が出掛けた後に言うなんてずるいよ。それよりも、今はこの状況をどうにかしなくちゃ。起き上がろうとする私をトワくんは手を握って優しく引いて自分の胸に私をおさめた。


「ああ、あんずちゃんの匂い大好きー。僕がプレゼントしたヘアオイルを使ってくれてるんだね。ダマスクローズの香りがあんずちゃんにピッタリ」

「トワくん」

「なーに?」

「ずっと考えてて。今日、花火大会に行った後に伝えようと思ったんだけどね」

「うん」



今、言うしかない。
サプライズパーティーを用意してくれていたトワくんには申し訳ないけれど。


最悪なのは、流されて体の関係をもってしまうことだ。



「別れたいの」




「は?」





今まで聞いたことのない低い声。

危険だと脳が判断したのか。私は抱き締められたトワくんの腕をはらって、無理やり体を離してベッドから立ち上がった。
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