花火に目がくらんでオチテいく
微動だにせず、俯いたままのトワくん。


何も言わず、静かな空間が流れる。私の鼓動の音だけが聞こえてきちゃいそうな空気の中で。


ポロポロと涙を流す彼。


「……トワくん」

「なんで……そんなこと言うの?」


初めて泣いているトワくんを見た。こんな反応をされると嫌でも罪悪感が芽生える。

もっと、イヤだ、別れたくないと取り乱して引き止められる姿を想像していたから。


「……束縛がキツくて。最近は友だちと遊ぶことも許してくれないでしょ」

「ナンパされたらどうするの? 女の子なんだよ。ムリヤリ車に連れ込まれたら? 心配なんだよ」

「タラレバの話はやめて」

「遊びたいなら僕が何時間でも付き合うよ」

「女の子同士がいい時もあるの。一人で出かけるのもダメって言うのもさすがにキツイ」

「一人で出かけるなんて危ないよ。何かあってからじゃ遅いんだよ」

「だから、タラレバの話はやめて」

「……僕が束縛をやめたら別れない?」


静まりかえる部屋。
頭の中は意外に冷静で。
私は口を開いた。


「トワくんは、やめられない。自分が一番分かってるでしょ」


そう言った瞬間。

今まで目を赤くして泣いていたトワくんが前髪をかきあげてクスクス笑った。


「ああーさすがあんずちゃん。僕のこと理解してくれてる。でもさ……」


(あ、ヤバイ)


私は逃げようとドアノブに手をかけて扉を開けた。その刹那、トワくんが後ろから私の腕をつかむ。

そして、ドアノブを左手で強引に引き、逃がさないとばかりに強くドアをしめられた。
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