花火に目がくらんでオチテいく
「そんな僕に“別れたい”って言って、素直に“分かった”って言うと思った?」




ーーこれが本性だ。

泣いていたのは、同情を誘うため。束縛をやめると言って別れを保留にさせて、あとはいつものようにうまく言いくるめて結局束縛はやめないつもりでいたんだろう。


「……最悪な気分。別れたいって。そんなこと思っていたの? 一秒でもそう思わせていた僕が悪いんだよね」

「ちが」

「何が違うの? 僕の束縛が耐えられないからイヤになったんでしょ」


そうだけど。それを肯定した後、トワくんが私に何をするか……怖くて。うまく言葉が見つからない。


「ねぇ、答えてよ。僕のこと束縛するだけでキライになったの?」

「キライじゃ……ないよ」

「じゃあ、別れる必要ないよね?」

「恋人としての好きはもうな……」


最後まで言い終わる前に、私はトワくんの右手で口を塞がれた。


「それ以上は言わないで。初めては優しくしたいのに。ひどくはしたくないんだ」

「……!!」


ウソだよね?
ムリヤリなんてしないよね?
だってトワくんは優しくて。
いつも我慢してくれて。


今度は私の涙が溢れ出てくる。

怖い。


「あんずちゃん、泣かないで。あんずちゃんが泣くと僕も悲しくなる」


そう言って、私のほっぺたを両手で包んで親指で涙を拭う。



「トワくん、お願い……ムリヤリはやめて」

「ごめん。怖かったね。そんなことあんずちゃんにしないよ。こんなに大好きなのに」


本当に?


「だからもうこの話はやめよう。仲直りのキスしよ」



今日は両親が帰ってこない。二人きりの家。トワくんが本気で怒ったらどうなるのか怖い。別れ話は今日はやめておいたほうがいい。



だから、……キスを受け入れた。
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