花火に目がくらんでオチテいく
「こっち向いて。腕枕してあげるー。もっとくっついて」


されるがまま。トワくんに腕枕をされて抱き締められる。そして、背中を優しく撫でてくれる。行為が終わった後でもトワくんは私を気遣ってくれている。


「そろそろ花火大会に行く準備しなくちゃだけど。今年は家から花火を見ようか。疲れたでしょー」


疲れた。もうどこにも行きたくない。


「シャワー浴びたらドライヤーかけてあげるねー。浴衣の着付けも。髪もかわいくしてあげる」


何のために浴衣を着るの?
家の中で花火を見るだけなのに。


「あんずちゃん、お話して。声聞きたいよー」


ああ、いっそ。
このまま壊れたフリをしようか。無反応な彼女なんて面白くないでしょ?


「あんずちゃん。僕のこと無視してるのー? 今、最高に幸せな気分だから別にいいけどねー。さ、一緒にシャワー浴びようねー」


私を起こして、子どもを抱っこするように縦に抱いてバスルームへと連れて行く。シャワーのお湯の温度がちょうどいい頃合いになると、スポンジにシャワーオイルを垂らして泡立てる。

このシャワーオイルもトワくんが準備していたもの? バスルーム全体に甘い花の香りが広がる。香りがすっかり彼好みのものだ。
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