花火に目がくらんでオチテいく
部屋に戻って、カーテンを開けて、ライトを消す。ひとり用の座椅子にトワくんは私を後ろから抱き締めるように座った。


ドンと音が鳴って、夜空に花のように開く大きな花火。会場で見る打ち上げ花火よりは少し小さいけど。赤に黄色に緑の光。キレイなものはキレイだ。



「今の大きかったねー」



トワくんは私の肩にあごをのせて密着してきて、相変わらずご機嫌。



「あんずちゃん、元気ないねー。疲れちゃった?」

「……トワくんは、私を軽蔑しないの? 別れたいって言っておいて、エッチしちゃうような女の子なんだよ」

「軽蔑も何も僕たち別れてないから、エッチするのも普通でしょー?」

「え……」



た、確かにまだ別れてはいないけど。



「お互い好きじゃなきゃできないことだもん。だから、そんなことで落ち込まないで。それでもあんずちゃんがへこむなら僕のせいにしていいよー」

「トワくんのせい?」

「うん。僕がムリヤリしたって思えばいいよ。それであんずちゃんが楽になれるなら、犯罪者になってもいいよー」


なんで、そこまで……。


「そんなこと言わないでよ。トワくんは私のことすごく大切にしてくれてるのに」

「大切だからこそだよ。あんずちゃんの存在自体が愛おしいんだ。時々愛おしすぎて、たまらなくなる時がある。

僕以外と話さないでほしい。僕以外を見ないでほしい。僕とだけいてほしい。

だけど、現実には難しいから。束縛しちゃってあんずちゃんにあんなこと言わせて。そう考えたらやっぱり僕は犯罪者だ」
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