花火に目がくらんでオチテいく
トワくんの顔を見ると、切なそうに笑って優しく私を見てくる。その表情に胸がチクンとした。


ドンと音がなった数秒後、パッと開くまぶしい花火。


トワくんの顔も眩しくて目がくらむ。


私は快楽だけじゃなくて、トワくんのことが好きで求めた。そう思っていいの?

ーーイインダヨ。

愛されて自分だけを見て欲しいと思うことはだめなこと?

ーーダメジャナイ。

ここまで深く愛されて幸せ?

ーーシアワセ。


心の奥底で自問自答していると、さっきまでの自己嫌悪が嘘のように薄れていく。トワくんのおかげだ。


花火はいつの間にか終わっていて。空はいつもの静寂と暗闇を連れてきた。


「浴衣脱いで、部屋着に着替える?」

「トワくん」

「ん?」


私は初めて自分からトワくんにキスをした。触れるだけのキス。

トワくんは目を見開いて驚いている。


「え、なん、え?」

「イヤだった?」

「イヤなわけないよ! 嬉しすぎて、びっくりして」


そう言って、私の右手首を掴んで、自分の左胸の下あたりに押し付けた。


鼓動が速い。私からのキスだけでこんなにドキドキしてくれるなんて。


「今日は記念日がみっつになった」

「みっつ?」

「付き合って4ヶ月と3日記念日。初めてひとつになった記念日。初めてあんずちゃんからキスしてもらえた記念日」

「ずっと気になってたんだけど、なんで4ヶ月と3日記念日なの?」

「あんずちゃんの誕生日が4月3日だからだよー」


ああ、それで中途半端な日が記念日になったのね。普通の人じゃ思い付かないよ。


「あんずちゃんの来年の誕生日、僕にお祝いさせてね」

「うん」


浴衣のまま、ベッドに寝かされてまた長いキスが始める。

優しく、丁寧に、慈しむように。
< 20 / 22 >

この作品をシェア

pagetop