花火に目がくらんでオチテいく
今日、別れを告げる相手とこんなことをしていていいのか。ドキドキとズキズキが混ざって、ぐちゃぐちゃな感情になる。

トワくんは、“それ”しか許されていない行為だからか。いつも、ゆっくり、長く、宝物を愛でるように時間をかける。



「……んん……」



顔を無意識に左に背けると逃がさないとばかりに顔をかたむけて唇を重ねてくる。

あらい呼吸に、ほてる体。涙が勝手に出てくると、やっとトワくんから解放される。

私の横にごろんと寝転んで、頭を撫でながら微笑む彼。満足したのか、さっきの空気は完全になくなっていて、ホッとした。



「今日ねー、あんずちゃんのパパとママは帰ってこないから。今日は二人きりだねー」

「え?」


き、聞いてない。


「びっくりしたー? うちの温泉つきの別荘に招待したんだ。日時指定の新幹線の切符つき。僕が家に泊まってもいいか聞いたら快くオッケーしてくれたよ。僕って“こういう”こと、しなそうって安心されてるんだー。だから親公認でお泊まりできちゃうから後ろめたさないでしょー?」

「な、なんで黙ってて……」

「サプライズだよー。付き合って4ヶ月と3日記念日。あんずちゃんのパパとママにもお願いして内緒にしてもらったんだー。

花火大会に行った後にあんずちゃんとふたりでパーティーするんだーて言ったらね、オードブルとスイカを冷蔵庫に入れておくね! って協力してくれたんだー」
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