彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「え!先生!どうしたんですか!?」

 「3Aの皆さんがここで飲んでるって小耳に挟んでね。ちょっと顔出してみたんだけど、僕も混ぜてもらっていいかな?」

 「もちろん!どうぞっ先生こっちに!」

 「きゃーっ先生と飲めるなんてラッキー!」

 瀬名先生の突然の登場に恵理ちゃんを筆頭にしげぴーと私以外の二人も盛り上がっている。
 私と真逆の端に座った先生と一瞬目が合い、反射で逸らしてしまった。

 気まずい。気まずすぎる。
 昨日の朝まで先生と一緒だったのだ。デートの口約束をしたあれから、連絡先を交換し、先生は2日目の学会へ参加するため私は帰らせてもらった。
 そのあとはとくにやり取りはしていない。デートの詳しい日時もまだ決めていない状態だ。

 「先生は今、付き合ってる人いるんですかー?」

 仕事の話から先生中心の話題となり、私としげぴー以外の3人は前のめりで先生に夢中だ。

 私は平静を装って普通に話を聞いている。しげぴーは、今日はずっと何か考えごとをしているかのような真剣な面持ちだった。先生が来てからは一段と面白くなさそうにしている。しげぴーはあまり瀬名先生が好きじゃないらしい。

 「今はいないよ。でも、ずっと好きな人はいる、かな」

 先生の言葉に、ぎくっと反応してしまい、お酒を飲む手が止まった。何故か目の前のしげぴーは先生を睨むように見据えている。

 「きゃー!だれだれ?ずっとって、先生案外一途なんですね!」

 「えーー、その想われてる人いいなぁー、羨ましいっ」

 「え、ヒント!ヒント欲しい!職場?全然関係ない人?」

 3人は楽しそうに盛り上がっている。

 好きな人がいるなら、私とデートなんかしている場合じゃないのでは・・・?先生は平気でそういうことができる人なのかな・・・。やっぱりチャラいのかなと私は一人で悶々としていた。

 先生はうまく話をかわし、結局先生の好きな人については明らかにならず飲み会はお開きとなった。
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop