彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
翌日のよく晴れた午後。
私は目の前の状況を飲み込めないでいた。
今日は彼、田代祐一(たしろゆういち)との2年記念日で、ここ、ディスティーノメモリアに宿泊してお祝いする予定だ。
ホテルロビーの高級感漂う上品なソファにテーブルを挟んで、お互い向き合ったかたちで座っている。
そこまではなにも問題はないのだけど、彼の横に強張った顔で一人の女性が座っている。
さっきから心臓の音が乱れてしかたない。
「ゆうくん、あの、この方は・・・?」
平静を装うも、声は震えそうになる。
「ひより・・・・・・ごめん。本当にごめんっ。彼女は僕の会社の後輩で、佐藤あかりさん。彼女の・・・お腹に・・・・・・・・・僕の子が、いるんだ」
鈍器で頭をガーンッと思い切り殴られたような衝撃だった。目の前の二人は俯き加減で、ゆうくんは深く頭を下げている。
息が詰まった。呼吸するのを忘れていたと思う。
目の前で頭を下げるふたりをボーッと見つめたまま必死で頭を回転させて彼に言われた言葉をやっと理解した。
だけど、ショックで何も言えなかった。
「・・・・・・・・・そう、なんだ。・・・・・・お幸せに」
気づいた時には口が勝手にそんなことを言っていた。