彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

ヒーローじゃないですか



二人が立ち去ったあと、私はまだその場から動けずにいた。


 どうしてこんなことに・・・


 今日は2年記念日だったはずだ。昨日恵理ちゃんの言っていた通り、プロポーズされるんじゃないかって、やっぱりどこかで期待していたと思う。

 ゆうくんは、真面目で優しくて思いやりのある素敵な人だった。大切にされている自覚はあったし、浮気するような人ではないと思っていた。

 後輩さんの仕事の悩みの相談に乗ってるうち、後輩さんがゆうくんに一度でいいから慰めて欲しいと迫った。それを、ゆうくんは断れなかった。・・・・・・そして、彼女のお腹には・・・・・・。

 
 膝の上に置いている拳にぎゅっと力が入る。


 ・・・・・・ゆうくんらしい。


 後輩さんも悪い子には見えなかった。


 何も言えなかった。


 責めることさえできなかった。


 だって、彼女のお腹には、もう新しい命がいるから・・・・・・


 だんだんと視界が滲んできて、これはマズいと思った時には、スカートにぽたりと一雫落ちた。


 「吉岡さん・・・?」

 聞き覚えのある声にハッとして顔を上げた。

 そこには、驚いた様子の瀬名先生。

 あ、マズいっ。咄嗟に下を向いたが、たぶん泣いていることに気付かれてしまった。

 そう思った時には、先生に腕を引かれ立たされていた。

 「ちょっとおいで」

 「えっ・・・先生っ!?」

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