お医者様になった幼馴染に強引にプロポーズされた件
 改めて目の前にすると身長差がはっきりして、私はどぎまぎした。

 肩幅が広くて、大きな花束を抱える手もまた大きい。

 目元は記憶より優しくなり、落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 いつのまにこんなに大人っぽくなったんだろう。
 そう思う私に、彼は言った。

「結婚しよう」
 彼は花束を差し出す。
 私は驚いて花束を見る。

「花束でプロポーズは定型すぎて嫌だったか?」
 私は慌てて首をふる。

「なら、OKなんだな」
「なんでそうなるのよ」
 なんでこんなに自信ありげに言うんだろう。

 つきあってもいないのに、なんの冗談? 花束まで用意して。エイプリルフールでもないのに。

「医学部を卒業して2年。この前、研修を終えたところだ」
「お疲れ様」
 私は反射的にそう言っていた。

「ありがとう。まだこれから後期の研修があるが、一応は医者として認められた。だからもう、これ以上は待たせたくなかった」
「え?」

「子供の頃、約束しただろ。医者になったら結婚してくれるって」
 私は口をあんぐりと開けた。

 あんな、その場しのぎの発言を彼が引きずってたなんて。
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop