春、いちばんの。


高校1年生 秋

あたし、三木 ひよりは春から高校生デビューというものをする予定だった。


持病のせいで、ろくに学校に通ったことがない

そんなあたしが、高校デビューってなに?

今更どうやって馴染めっていうの

今更どうして周りと同じように生きていけというのだろう


高校生活が許されたのは病状が落ち着いたからじゃない。

あたしは、完全なあたしじゃなくなったから。

他人の命を犠牲にして、今あたしはここにいる


いらなかった、なんて口にするのもきっと許されない......

明確な理由なんてきっとないんだ。

もっと生きたかった人がいるのに、とか
命をもらっておいて何様なんだ、とか
遺族の気持ちを考えろ、とか。

そういう不確かで曖昧な、人の気持ちに
ずっとあたしは縛られている

もう、十分なくらいに。


「......起きた?」


聞き慣れない声だった。

まるで、前から知り合いだったような......


「、誰」


目を開けたくなかった

現実にはもう戻りたくない

夢だって、誰でもいいからいってよ


「ごめん、驚かせたかな」

「あなた、誰」


男の子の声

あたしの身内にこんな声の持ち主はいないから
大方ここに用がある人

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