溺愛ラブホリック!
 そのとき、雅くんの手に握られていたスマホから、カシャッとシャッター音が聞こえた。

「ごめん。つい、無邪気な輝夜が可愛くて」

「か、かわっ……!? 雅くんって、意地悪だったんだね……もう」

 プクッと頬をふくらませると、ぷはっと雅くんは吹き出した。

 こんな意地悪な雅くんの一面、誰も知らないんだろうなぁ……得した気分!

 学校では、クールで硬派な、笑わない王子様。

 けど、ほんとの素は可愛いもの好きで甘党、そして意地悪で。

 こんなふうに、知らないところを見つけるのって、ちょっと楽しいかも。

 ……この関係は、嘘なんだけどね。

 秘密の、契約をしているんだから、この時間は永遠には続かないんだよ。

 そうじぶんに言い聞かせて、雅くんは好きになっちゃダメなんだよ、ともう一度繰り返して。

「輝夜、俺にも一口ちょうだい?」

「え……? も、もしかして、カップルがよくやる、”あーん“しろってこと!? むっ無理無理!」

「バレたか。いいじゃん、成績上がるし。ほら?」

 んぅ……ひ、ひどい、こういうときだけ成績向上の話持ちかけるなんてっ!

 本当に、雅くんは意地悪王子様だということを実感した。

 それにこれ、クレープだから、かっ、”間接キス“ってことにもなっちゃうし……。

 ……っえーい、やってみる価値はある!

 やるぞぉ〜っ!

「わ、わかったよ……っは、はいっ」

 私は思い切ってクレープを雅くんの開いた口に突っ込んだ。

 それから、雅くんはモグモグ口を動かして、キラッキラに目を輝かせた。

「うま……っ。この店、なかなかやるな。うちの財閥で買収しようか」

「い、異次元のお坊ちゃまめっ……」

 甘やかされて育ってきたから、こんなになっちゃったのかな!?

 ほんとは優しくて気遣いができるなんて、デマだよ〜っ。

 私は朝の女の子達に忠告するように、うわぁあっと心の中で叫んでいた。
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