溺愛ラブホリック!
 えぇぇ……そうなの……。

 ありえないって真正面から言われると、ちょっとショックだな。

 あからさまにしゅんと沈んでいると、英梨々と稔ちゃんはハッとした様子で、それも束の間に慌てだした。

「ごめんなさい、興奮しちゃって……」

「ごめんっ! 輝夜……」

「いや、謝ることじゃないよ! 大丈夫だからっ!」

「「神、仏様ぁ〜」」

 ふたりはドバーッと滝のように涙を流しながら、私に抱きついてきた。

 うわぁ!? ……ふふっ、なんか嬉しいな。

 でも、神とか仏って、どういうことだろう?

 過剰評価なんじゃ……。

「まあ、あたしは今日このぐらいかなぁ。日久留にサッカー誘われてるんだよね〜。へへ、じゃあね!」

 行っちゃった英梨々は、なんだか嬉しそうに玄関を飛び出していった。

 矢田部くんとの約束が楽しみなんだね〜。

「あ、私も藤井くんと図書室で勉強に誘われてるんです。輝夜さん、お邪魔しました!」

 それに、稔ちゃんも楽しそう!

 ふたりとも、やっぱり好きな相手との約束、楽しみなんだ。

 私も、今度雅くんと約束してみようかなっ?

 ふたりを見て、ちょとワクワクしてきちゃうよ。

 私は明日、学校で誘ってみようと決心したのだった。

 そして翌日……。

 波乱の幕開けのきっかけである、転校生がやってきた。

「斎藤杏梨(さいとう あんり)でーす! よろしくねー」

「斎藤里咲(さいとう りさく)です。杏梨と双子で、花ノ宮学園からきました。よろしく」

 双子の斎藤兄妹は、すぐクラスに馴染んだ。

 でも、クラスではパートナーが全員見つかってるから、仕方なく双子でパートナーになったの。

 だけど……杏梨ちゃんは、雅くんを狙ってるみたいだし、里咲くんは、私を気に入っちゃったみたい……?

「雅ー、ここがわからないの〜。教えてくれない〜?」

「無理。てか近づくな」

「ひどいよ〜。それに、早くパートナーと別れてよ〜」

 ギロリと私を睨んでから、杏梨ちゃんはまた可愛らしい笑顔に戻った。

「懲りないよね、杏梨」

「ほんとですよ! 杏梨さん、言っちゃいますけどパートナー奪うのって違反なので退学になりますよ!? 私はそうなってほしいんですけど……」

「あはは……嫉妬しちゃうなぁ……」

 私は乾いた笑みを顔に貼り付けると、ふたりを見つめた。

 むぅ……雅くんは、”私の“なのにっ。

 って、雅くんは誰のものでもないっ。嫉妬とか、してないもん……。

「なぁ輝夜。お願いだから俺のことも見てよ」

「ごっ、ごめんね、里咲くんっ。私、雅くんのパートナーだから……」

「あいつは杏梨に取られる。だから俺と……」
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