溺愛ラブホリック!
「ゆっ、夕陽(ゆうひ)さん、お友達ですか?」

「ん? あぁ、忘れてた、ごめんごめん、南瀬(みなせ)。輝夜、この子は南瀬っていうんだ。南瀬稔(みなせ みのり)!」

 夕陽っていうのは、英梨々の苗字だよ。

 稔ちゃんは、そそそっと英梨々の背中に隠れちゃってて、あんまり顔が見られない。

「稔ちゃん? 怖がらなくていいよ! 私、月姫輝夜! 輝夜って呼んでくれると嬉しいなぁ〜。あっ、軽々しく稔ちゃんなんて、ごめんね? 嫌だったかな……?」

 恐る恐る聞くと、稔ちゃんはブンブン首を横に振った。

 おさげにしている濃い紫色の髪が右往左往して、同じ色の目も、違うって反対してるみたいにギュッてつぶられてる。

 ホッ……とりあえず一安心。嫌ってわけじゃなかったみたい!

「か、輝夜さんって、呼ばせてもらいますねっ……あと、私、夕陽さん以外友達がいなかったので、嬉しいです。……わっ、私と友達なんて嫌でしたか……?」

「ううん! 全然嬉しいよ! 私も友達ができるか不安だったんだ。仲良くしようね、稔ちゃん!」

「おぉ〜、さっすが輝夜。誰とでも仲良くなれるフレンドリー能力の使い手だね〜。あたしはこのちょっと怖い顔のせいで、友達輝夜と南瀬ぐらいしかいなかったんだよね。あっ、南瀬、あたしも稔って呼んでいい?」

 パチパチパチと拍手して、私の肩に手を回した英梨々は、いつもの懐かしいニカッとした人懐っこい笑顔を屈託なく向けた。

 ははっ、変わらないなぁ、本当、英梨々は!

 私もつられて、ニカッと笑っちゃう。

「も、もちろんです、夕陽さん! じゃあ私も、英梨々さんって呼ばせてもらいますね……?」

 疑問形で聞き返す稔ちゃんに、英梨々はオッケーって意味を込めて、グッと親指を立てた。

 そんなこんなで、私達は同じクラスなことを喜んでから、教室に向かったんだ。

 って、あれ? 教室に近づくにつれて、うるさくなるし、人だかりができているような……?

 身長が低い私は、ヒョコッとジャンプして人混みの奥の中心にいる人を見つけた。

 あっ、星宮くんだ!

 見間違えるはずのない、漆黒のサラサラの髪。冷ややかな視線で、氷漬けになっちゃいそうな深い青の目。真っ白な雪のような肌に、スッと通った鼻筋に、凛とした横顔。

 ……イケメンだ、これが。

 改めて見てみて、わかったんだ。
< 5 / 23 >

この作品をシェア

pagetop