運命なんていらない

華美くんの調査スタート

華美くんについての調査を始めて、1週間がたった。

といっても、華美くんについて調べれば調べるほど「腹黒説」からは離れていった。

部活には所属していないが、スポーツは万能。

テストは必ずTOP5に入る。

先生からも気に入られる優等生だが、友人といる時はふざけ合っているので、変に敬遠されることもない。
そして、顔もいいから男女どちらからも人気が高い。

いつも人に囲まれてている、まさに「陽キャ」

これが、この1週間彼の友人たちからの聞き込みで分かった情報だ。

この頃に、もはや真奈美も興味を失い始めていた。

金曜日の放課後。
ホームルームが終わった後、私の元にやってきた真奈美は手を合わせて頭を下げた。

「ごめん!華美くんただのいい人だったわ(泣)もう、この調査終わりにしよっか」

真奈美があまりにも真剣に謝るものだから、私は思わず吹き出しそうになった。

「了解。了解。ね?イケメンも捨てたもんじゃないでしょ?」

「いや、それはない!今回はたまたまだったの〜!」

わたしが何とか笑うのを堪えてした返事に対して、真奈美は食いかかるように反対してくる。

そんな真奈美をなだめながら、私たちは学校を出た。

「ねぇ今日授業も早く終わったし、今から遊ぼーよ。ほら、約束のジュースも奢らないとだし?」

ジュースをおごってもらえるから、という理由で賛成した訳では断じてない。
ただ、私も今日は遊びたい気分だったので、真奈美と一緒にこの町で1番大きな公園に行くことにした。

今は9月。秋が始まろうとしているはずなのに、まだまだ長袖は暑い。

緑がまだ多い公園には、元気な小学生たちが鬼ごっこをしている様子が見えた。

「冷たっ!」

どうやら、公園についてベンチに座ったあとからぼーっとしていたらしい。

気づけば先程までスマホを持って私の隣にいた真奈美の手には、片手に1本ずつ、2本のジュースが握られていた。

「はい、これ、ピーチソーダ。ちゃんと、180円のやつですよ〜笑」

透き通ったピンク色の液体が、傾いてきた日の光を浴びて、キラキラと輝いていた。

私は感謝を伝えながらジュースを受け取った。

ピーチサイダーの蓋を開ける。

シュワっという音ととな小さな泡たちが少しだけ、溢れてくる。
口の中に一気に流し込むと、炭酸のシュワシュワが喉の奥を刺激した。

鼻から抜ける息にはピーチの匂いがする。

私と真奈美の思い出の味だ。

私と真奈美はしばらく雑談をした。

風が少し強く吹いた時に、ふと周りを見回すと、辺りが黒色に染まり始めていることに気づいた。

時計を見ると、もう7時を回っているところだった。

「帰ろっか」
「帰ろうね〜」

2人で公園に来た時より、いくらか涼しくなった帰り道を少しだけ、急ぎ足で帰った。
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