いばらの塔のエリオット

不慣れな手つき

「ふっ、あぁっ」

 王子の舌が、メリの首元を這い回る。
 チロチロと、まるで蛇が獲物を確かめるかのような舐め方だった。

「やっ、王子、だめっ……はぁっ」

「ボタンを、外してくれ」

「んもう……」

 王子のブラウスの、くるみボタンに手をかける。メリがボタンと格闘している間、彼はメリの腰に片手を置き、もう片方の手で耳をくすぐっている。

 もどかしい刺激に、体をくねらせつつも、なんとかシャツを剥がした。

「メリ」

「なんでしょう」

「……いやらしい顔つきをしている」

「なっ、それは、王子が……」

 息が上がっていた。
 昨日、王子の妖艶な姿を前に堪えていたせいか、こんな戯れのような接触だけなのに、下着の中が湿っている気がする。

「まだ、服は残っている」

「くぅっ、もう!」

 メリは、王子のズボンに手をかける。ベルトに手をかけた時、気がついた。アレの形がわかるほどに、そこが盛り上がっている。

 ズボンを下ろせば、猛り、血管の浮き出た彼の体の一部があらわれた。

「王子だって、興奮されています」

「あまり見るな」

「脱がせと言ったのは王子です」

 また、いたずら心がむくむくと湧き上がる。するすると手を肉棒に滑らせれば、王子は体を震わせた。

「おい、やめろ」

「でも、おつらそうですよ?」

 ゆっくりと、しかし丹念に、射精を促すような動きを繰り返す。メリの両手の中で硬さを増したそれは、ピクピクと波打っている。

「あ、はぁっ、メリ……ああ……」

「気持ちいいんですね、王子様。濡れてきていますよ」

「言うな、やめろ、やめてくれ……」

 言葉ではそう言っているが、体を桃色に染め、快楽に負けた顔をしている。前回触っただけで果てたことを考えれば、今は、必死の思いで射精感をおさえているのだろう。

「メリ、だめだ、だめ……」

 王子の体がしなだれかかってくるように崩れた瞬間。メリはうっかり足を滑らせ、後ろにひっくり返った。
 幸い、頭を打たなかったのは良かったのだが。

「うわぁ……びしょびしょ」

 風呂桶に突っ込み、全身びしょ濡れになってしまった。
 湯に濡れた衣服は、肌に吸い付き、メリの体の輪郭をあらわにした。丸い胸元からは、下着が透けている。

「わ、わるい。突き飛ばすつもりは……」

「いえ、私が滑ってしまったので。それに、高貴な方のお湯を汚してしまい、申し訳ありません……」

「汚すなどと」

 王子はメリに近づくと、彼女を桶から抱き上げた。

「メリ、このままでは風邪を引いてしまう。服を脱いでくれ」

「え、いや……! それは、ちょっと」

「大丈夫だ。最後まではしない」

「えっ、最後までって」

 王子はメリの抗議の声など聞こえないように、彼女の服を脱がし始める。獣のような目つきに、メリは見惚れ、言葉とは裏腹に、次に訪れるなにかを、期待し始めていた。


「メリ、綺麗だ」

「そんな……」

 今度はメリが、王子から顔を背ける。身包み剥がされ、大きな風呂桶の中に向かい合わせに座らされていることが、メリは恥ずかしくてたまらなかった。

「触っても、いいだろうか」

 そんなこと、聞かないで欲しい。
 いっそ、無理矢理にでも襲って欲しかった。

「どうぞ……」

 仕方なくそう言葉を返せば、待ちかねたように王子は手を伸ばし、メリの乳房を両手でつつんだ。

「ん……」

「気持ち、いいのか……?」

「いえ、揉まれるだけでは、女はあまり感じません。くすぐったいような、そんな感じです」

「そうなのか」

 初めての感触を確かめるように、優しくメリの胸を揉む。
 遠慮がちに触っている感じで、いかにも「初めて」というのがわかる手の動きだった。
 しばらく膨らみを弄んでいた王子だったが、メリの瞳を見つめ、口を開く。

「ここはどうだ」

 突然、膨らみかけていた胸の蕾を、ぴんと弾かれる。

「あっ!」

 油断していて、思わず声が出てしまった。

「感じるのか」

 めざとくメリの反応を捉えた王子は、指の腹を使って、まだ柔らかな胸の突起を、優しく押し込むようにこね始める。

「は……ああっ! いやっ、そんな、こねないで……」

「少し、立ってきた」

「ん! ああっ、いや、その触り方、だめっ! だめですって」

 メリの反応を楽しむように、王子は胸の先をしごいたり、指でこね回したり。硬くなった頂上を、カリカリと引っ掻いたりした。

 これまでそんなに執拗に胸を責められたことのなかったメリは、あまりの快楽にのけぞり、腰をくねらせている。

「そんなに目の前に突き出されては、我慢ならなくなる」

「ああん!」

 王子は、メリの両胸を中心に寄せ、硬くなりきった蕾を擦り合わせた。そして、腰を揺らすメリの様子を満足げに眺めながら、一度に二つの蕾を、口内へと吸い込んだ。

「はっ、あ、あ、王子、いやっ! 私、いってしまいそう」

 飴玉のように執拗に蕾をなめまわされ、メリの意識は飛びそうになった。
 こんなに胸で感じたことは初めてで、戸惑いながらも快楽に悶える。
 かろうじて意識を留めたメリは、王子の下半身に手を伸ばす。

「あんっ、はぁ、はぁ……王子も……」

「……くっ……」

「王子も、一緒に……」

 塔の中に、嬌声が響く。お湯の波打つ音の中で、メリと王子は、お互いの体を弄りながら、長く、甘い絶頂を味わった。
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