機械人形の見る夢
 彼女は気付く。
 彼は愛とは無縁の“人生”を送ってきたのだと。

 彼女は顔を上げて彼をまっすぐに見る。

「“命令”とは違うけれど、あなたが私の話し相手になってくれたら嬉しい」


 こうしてアンドロイドの彼と娘の二人きりの生活が始まった。

 彼女は小さな内職を掛け持ち細々と暮らしていた。

 彼と過ごす時間はたくさんあったため、状態を良く見てやり、高価なものではないが服を新調してやり、身支度を軽く整えてやる。
 彼の腕の“傷”だけは直してやることができないため、彼にも気をつけるよう促した。

 そして自分の祖母が昔語ってくれた話の“小さな魔女”のように彼女は今まで彼のしてきたことを聞き、良心を持てるよう彼を優しく諭す。

「あなたを拾ったご主人がした命令は、良くないことだった。あなたに良いことと悪いことの区別を教えてあげなかった周りが良くないのね。なんでも命令すればいいというわけじゃないのに……」


 それからも彼女は幼い頃に祖母から聞いた物語を、いくつも彼に聞かせていく。
 彼はそれを“命令”と認識していたのか、拒むことなく彼女の話を真剣に聞き続けた。

 そうして過ごすうち、彼は次第に彼女に寄り添うようになっていった。
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