優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?
29.不審な者達(エルメラ視点)
ある時から、お姉様は慈善活動に参加するようになった。
それは貴族としては、とても自然なことではある。体裁のために、そういったことを行う貴族は多いのだ。
ただお姉様は、そういった者達とは違う。本当に多くの人の幸せを願っている。お姉様は、そんな女神のような人格者なのだ。
「いや、ありがとうございます。まだ若いのにご立派だ……」
「いいえ、私は当然のことをしているだけですから」
「この国の未来は、明るいですね。私なんかも、希望が持てます」
ある日のこと、私はお姉様とともに慈善活動に参加していた。
貧しい人達に対する炊き出しは定期的に開催されているが、その一つに姉妹で参加する運びとなったのである。
「お姉様、お疲れ様です」
「あら、エルメラ、そっちは一段落ついたの?」
「ええ、お姉様の方を手伝います」
「こっちも、人は充分にいるから大丈夫よ。あなたは、先に休んでいて。私も多分、もうすぐ休めると思うから」
「わかりました。お待ちしています」
お姉様と言葉を交わした後、私は言われた通り少し休憩することにした。
基本的に、私は他人と接するということが得意ではない。お姉様とならいくらでも話せるのだが、知らない人と話すのはやはり気が引ける。
慈善活動によって、私は疲労していた。だからだろうか、私はお姉様の方から少しだけ意識をそらしてしまった。
「……うん?」
そこで私は、お姉様の前に身なりがいい二人組がいることに気付いた。
その者達は、どう考えても炊き出しに来たといった感じではない。
いやというか、その者達の格好には見覚えがある。あれは確か、私が研究の成果を報告した研究機関の職員の制服だ。
「お忙しい所申し訳ありませんね、イルティナ嬢……ですが、大切な話があるのです」
「大切な話、ですか?」
「ええ、あなたの妹、エルメラ嬢のことです」
「エルメラの……」
職員達は、お姉様に対して詰め寄っている。
それは、何かしら良くないことの前触れであるように思えた。
まさかあの偉い人が私のこと恨んで、お姉様に何かをしようとしているのではないか。私の頭には、そのような考えが過った。
「……待ってください」
「え?」
お姉様を助けなければならない。そう思って一歩を踏み出そうとした私は、足を止めることになった。
それは私よりも先に、お姉様と職員達の間に割って入った者がいたからだ。
お姉様と同い年くらいに見えるその少年は、職員達を睨みつけている。その視線は、中々に鋭いものだった。
その人物のことは、私も知っていた。
ドルギア・ディルモニア。この国の第三王子である。
それは貴族としては、とても自然なことではある。体裁のために、そういったことを行う貴族は多いのだ。
ただお姉様は、そういった者達とは違う。本当に多くの人の幸せを願っている。お姉様は、そんな女神のような人格者なのだ。
「いや、ありがとうございます。まだ若いのにご立派だ……」
「いいえ、私は当然のことをしているだけですから」
「この国の未来は、明るいですね。私なんかも、希望が持てます」
ある日のこと、私はお姉様とともに慈善活動に参加していた。
貧しい人達に対する炊き出しは定期的に開催されているが、その一つに姉妹で参加する運びとなったのである。
「お姉様、お疲れ様です」
「あら、エルメラ、そっちは一段落ついたの?」
「ええ、お姉様の方を手伝います」
「こっちも、人は充分にいるから大丈夫よ。あなたは、先に休んでいて。私も多分、もうすぐ休めると思うから」
「わかりました。お待ちしています」
お姉様と言葉を交わした後、私は言われた通り少し休憩することにした。
基本的に、私は他人と接するということが得意ではない。お姉様とならいくらでも話せるのだが、知らない人と話すのはやはり気が引ける。
慈善活動によって、私は疲労していた。だからだろうか、私はお姉様の方から少しだけ意識をそらしてしまった。
「……うん?」
そこで私は、お姉様の前に身なりがいい二人組がいることに気付いた。
その者達は、どう考えても炊き出しに来たといった感じではない。
いやというか、その者達の格好には見覚えがある。あれは確か、私が研究の成果を報告した研究機関の職員の制服だ。
「お忙しい所申し訳ありませんね、イルティナ嬢……ですが、大切な話があるのです」
「大切な話、ですか?」
「ええ、あなたの妹、エルメラ嬢のことです」
「エルメラの……」
職員達は、お姉様に対して詰め寄っている。
それは、何かしら良くないことの前触れであるように思えた。
まさかあの偉い人が私のこと恨んで、お姉様に何かをしようとしているのではないか。私の頭には、そのような考えが過った。
「……待ってください」
「え?」
お姉様を助けなければならない。そう思って一歩を踏み出そうとした私は、足を止めることになった。
それは私よりも先に、お姉様と職員達の間に割って入った者がいたからだ。
お姉様と同い年くらいに見えるその少年は、職員達を睨みつけている。その視線は、中々に鋭いものだった。
その人物のことは、私も知っていた。
ドルギア・ディルモニア。この国の第三王子である。