優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?

34.珍しい反応

 お父様との話が終わった後、私はエルメラとのお茶会に臨んでいた。
 一時は取りやめも視野に入れていたこの催しではあるが、結局続けている。
 それに対して、エルメラは特に何も言っていない。ということは、彼女も続けることには賛同しているということだろう。

「あのね、エルメラ。あなたに伝えておかなければならないことがあるのだけれど……」
「……なんですか?」

 しかし、今日のエルメラはとても機嫌が悪そうだった。
 いつも不機嫌そうな顔をしているのだが、今日はその比ではない。彼女とは長く共に過ごしてきた訳だが、この表情を見るのは初めてである。

 だが、そんな中でも私はエルメラに伝えなければならないことがあった。
 もしかしたら、既にお父様やお母様から知らされているのかもしれないが、大切なことなのできちんと私の口から話しておくべきだろう。

「私の婚約が決まったの。相手は、ドルギア殿下で……」
「……おめでとう、ございます」
「あ、ありがとう……」

 エルメラは、私の言葉にとてもぎこちない口調で言葉を返してきた。
 なんというか、エルメラの歯切れも悪い。お父様といい、今日は一体どうしたのだろうか。

「えっと、ドルギア殿下との縁談なんて、すごい話よね? 私、正直とても驚いているの」
「そうですか」
「よくわからないのだけれど、私とドルギア殿下の婚約を熱望していた人がいたみたいで」
「熱望? いや、熱望なんてそんな訳が……」
「え?」

 私の言葉に、エルメラはおかしな返答をしてきた。
 熱望という言葉に違和感を覚えたようだが、それに引っかかるということは、エルメラは今回の婚約を望んでいた人のことを知っているということになる。
 反応が悪かったのは、もしかして既に婚約に関するあれこれを知っていたからだろうか。その可能性は、ない訳ではない。

「エルメラ、あなたはもしかして今回の縁談を提案した人を知っているの?」
「……いえ、そういう訳では」
「本当に?」
「ええ、本当ですとも」

 私の質問に対して、エルメラは珍しく動揺を見せた。
 この妹が、このように感情を見せるということは、私の予測は当たっているかもしれない。

「エルメラの知り合いとなると……研究者とか、偉い人かしら?」
「お姉様、私は違うと言ったはずですが」
「ああでも、そうなると、目的はエルメラとの繋がりなのかしら? 王家との婚約で、アーガント伯爵家に恩を売りたいとか」
「いえ、そういう訳ではありません……あっ」

 私の予測に対して、エルメラは少し前のめりになって言葉を発した。
 その露骨な反応に、私は少し驚いてしまう。この妹がこんなにも必死になるなんて、一体この婚約には何が隠されているのだろうか。
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