優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?
36.彼女との出会い(ドルギア視点)
偉大なる長兄ダルキスは、誰もが認める次期国王候補筆頭だ。
それが覆ることなど、まずあり得ないだろう。僕を含めた兄弟の誰もが、ダルキス兄上が父上の後を継ぐことを望んでいる。
次男であるチャルアは、そんな兄上のことを支える覚悟をしている。
武術において優れた才能を有するチャルア兄上は、国を守る騎士団を何れ率いる立場になるだろう。
ダルキス兄上にとって、最も信用できるチャルア兄上が騎士団を率いるということは、ディルモニア王国を盤石に固めるだろう。
長女であるツゥーリアは、そんな兄上達にとって、頭が上がらない存在だ。
ダルキス兄上には妹として、チャルア兄上には姉として、ツゥーリア姉上はいつも鋭い意見を出している。
二人が仮に何かを間違えようとしている時は、姉上が止めるだろう。姉上はこの国の防波堤だといえる。
次女であるティルリアは、そんな三人とは少し離れた場所にいる。
彼女は、教会を自分の居場所に選んだのだ。それは恐らく、純粋な信仰心からの判断なのだろうが、結果的には三人と違う方面から、王国を支えているといえるだろう。
そんな兄上や姉上に比べて、何ができるのか。それは僕にとって、永遠の課題であった。
四人の後を追うという選択は、初めからなかった。兄弟は皆、それぞれの役割を見つけている。その後追いをした所で、意味はない。
王族の端くれとして、僕も国を支える何かを見つけたかった。そんな風にずっと悩んでいた僕は、ある時一人の少女と出会った。
「大丈夫ですか? グラットンさん」
「あなたは……」
王国が主体としている慈善活動の場において、その少女は貧しい身なりの男性に手を差し伸べていた。
それ自体は、なんてことがないことだ。その会場の中で、彼女が特別なことをしていたという訳ではない。
しかし何故だか、僕はその少女を目で追っていた。何故かはわからないが、彼女のことがとても気になったのだ。
「病気は良くなりましたか?」
「ええ、お陰様で……ああ、実は仕事も見つかったんですよ」
「本当ですか? それは何よりです」
「あなたやここにいる皆様のお陰ですよ。いや、良い国に生まれたと、最近は常々思います」
綺麗な目をしていると、そう思った。
澄んだ目をしたその少女は、貧しき人を真っ直ぐと見つめている。その瞳には、曇りなんてない。
きっと彼女は、清い心の持ち主なのだろう。その時の僕は、そんな風に思っていた。
ただその時は、それ以上何かあったという訳でもない。
僕はその少女に話しかけもしなかった。彼女と知り合ったといえるのは、もう少し後のことだ。
それが覆ることなど、まずあり得ないだろう。僕を含めた兄弟の誰もが、ダルキス兄上が父上の後を継ぐことを望んでいる。
次男であるチャルアは、そんな兄上のことを支える覚悟をしている。
武術において優れた才能を有するチャルア兄上は、国を守る騎士団を何れ率いる立場になるだろう。
ダルキス兄上にとって、最も信用できるチャルア兄上が騎士団を率いるということは、ディルモニア王国を盤石に固めるだろう。
長女であるツゥーリアは、そんな兄上達にとって、頭が上がらない存在だ。
ダルキス兄上には妹として、チャルア兄上には姉として、ツゥーリア姉上はいつも鋭い意見を出している。
二人が仮に何かを間違えようとしている時は、姉上が止めるだろう。姉上はこの国の防波堤だといえる。
次女であるティルリアは、そんな三人とは少し離れた場所にいる。
彼女は、教会を自分の居場所に選んだのだ。それは恐らく、純粋な信仰心からの判断なのだろうが、結果的には三人と違う方面から、王国を支えているといえるだろう。
そんな兄上や姉上に比べて、何ができるのか。それは僕にとって、永遠の課題であった。
四人の後を追うという選択は、初めからなかった。兄弟は皆、それぞれの役割を見つけている。その後追いをした所で、意味はない。
王族の端くれとして、僕も国を支える何かを見つけたかった。そんな風にずっと悩んでいた僕は、ある時一人の少女と出会った。
「大丈夫ですか? グラットンさん」
「あなたは……」
王国が主体としている慈善活動の場において、その少女は貧しい身なりの男性に手を差し伸べていた。
それ自体は、なんてことがないことだ。その会場の中で、彼女が特別なことをしていたという訳ではない。
しかし何故だか、僕はその少女を目で追っていた。何故かはわからないが、彼女のことがとても気になったのだ。
「病気は良くなりましたか?」
「ええ、お陰様で……ああ、実は仕事も見つかったんですよ」
「本当ですか? それは何よりです」
「あなたやここにいる皆様のお陰ですよ。いや、良い国に生まれたと、最近は常々思います」
綺麗な目をしていると、そう思った。
澄んだ目をしたその少女は、貧しき人を真っ直ぐと見つめている。その瞳には、曇りなんてない。
きっと彼女は、清い心の持ち主なのだろう。その時の僕は、そんな風に思っていた。
ただその時は、それ以上何かあったという訳でもない。
僕はその少女に話しかけもしなかった。彼女と知り合ったといえるのは、もう少し後のことだ。