優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?

58.平和な暮らし

 私はアーガント伯爵家の屋敷で、ドルギア殿下と平和に暮らしていた。
 本当にとても平和な暮らしが遅れている。今の所、特に問題は起きていない。
 強いて言うなら、エルメラが少し不機嫌なことは問題といえるだろうか。ただ、私とのお茶会ではむしろ今までよりも楽しそうにしているし、単に騎士団の手際の悪さに怒っているだけかもしれない。

「でも、そろそろ見つかってもいい頃だと思うんですけどね?」
「ええ、それについては僕も気になっています。ヘレーナ嬢が、思っていたよりも手練れだったということでしょうか?」
「そうかもしれませんね。彼女のことは、エルメラもそれなりに評価していましたし……」

 エルメラは、ヘレーナ嬢のことを自分の千分の一くらいの才能があると評していた。
 それは、かなり評価が高い方だ。エルメラの千文の一なんて、充分に天才といっていい部類である。
 エルメラさえいなければ、王国一の魔法使いと呼ばれていたかもしれない。とにかく、ヘレーナ嬢が稀有な才能を持つことは確かだ。

「まあ、見つかったにしても見つからないにしても、そろそろチャルア兄上から連絡の一つもくるでしょう。どちらにしても、近況を報告してくれるでしょう」
「何か手がかりでも見つかっていればいいですがね……あら?」
「おや、噂をすれば、ということでしょうか?」

 私とドルギア殿下が話していると、エルメラがこちらにやって来た。
 彼女は、真剣な顔をしている。そういう顔をしているということは、何かヘレーナ嬢に関することで進展があったということだろう。

「エルメラ、何かあったの?」
「ええ、ヘレーナ嬢が見つかったようです」
「そうですか。それは何よりですね」
「遅すぎるくらいです。まったく、騎士団ときたら……」

 エルメラは、騎士団に対して悪態をついていた。
 それは最早仕方ないことだ。騎士団は今回、様々な間違いを犯した。その失敗から考えると、ヘレーナ嬢くらいはもっと迅速に見つけてもらいたかったものだ。

「ただ、騎士団のおかげでヘレーナ嬢に対して最も有効な手を思いつきました」
「有効な手? 正面からぶつかって、あなたが負けるとは思えないのだけれど」
「それはもちろんそうですが、彼女は好き勝手してくれましたから、その報復をしなければなりません」
「報復、それは物騒ね……」

 エルメラはなんというか、邪悪な笑みを浮かべていた。
 この妹は、中々に物騒なことを言い出すものだ。
 とはいえ、ヘレーナ嬢に同情はできない。元々エルメラを止められる訳でもないし、ここは彼女に任せるとしよう。
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