優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?
7.話してみたら
「……浮かない顔をしていますね、イルティナ嬢」
「あ、えっと……」
エルメラが驚くべきことを言った数日後、私はまた慈善活動に参加していた。
今回は、王家が主導して行っている慈善活動であるため、その場にはこういったことの代表であるドルギア殿下がいた。
彼は、私のことを心配そうに見つめている。私はそんなに浮かない顔をしているのだろうか。
「何かあったのですか?」
「えっと……まあ、色々とありまして」
「色々、ですか」
ドルギア殿下の善意に対して、私は曖昧な言葉を返すことしかできなかった。
アーガント伯爵家の内情に関することを話すべきではない。そう思ったのだ。
「……婚約のことですか?」
「え? どうして、わかるんですか?」
「ああいえ、その、直近でイルティナ嬢にあった変化というと、それかと思って……」
しかし私は、すぐに間抜けを晒すことになった。
ドルギア殿下の質問に、私はまんまと内情を口にしてしまったのだ。
これにはドルギア殿下も、目を丸くしている。恐らく彼にとっては、何気なく口にした言葉だったのだろう。
「……まあ、ばれてしまったら仕方ありませんね。どうせすぐ正式に発表されるでしょうし、お伝えします。実は私の婚約は破談になったんです」
「破談、ですか?」
「ええ、まあアーガント伯爵家とパルキスト伯爵家の婚約自体は続いているんですけど……」
「……妹君との婚約に、変更されたということでしょうか?」
「ええ、そういうことです」
ドルギア殿下は、私の言葉に少し考えるような仕草を見せた。
今回のような件は、少々特殊だ。やはり彼も、驚いているのだろう。
「何があったか、これ以上お聞きしてもいいものなのでしょうか?」
「大丈夫です。事情はそんなに難しいものではありませんよ。パルキスト伯爵家が、優秀な妹の方がいいと言ってきたというだけのことですから。私では不服だったみたいです」
「……アーガント伯爵家が婿を迎えるのでしょう? パルキスト伯爵家は、そんなことを要求できる立場ではないと思いますが」
「それに関しては、そうなんですよね。でも、妹が了承してしまって……」
ドルギア殿下は、至極全うな指摘をしてきた。
パルキスト伯爵家の言動は、正直言って不可解だ。どうしてあんなに強気だったのだろうか。その意味がまったくわからない。
まさか、エルメラが了承することを読んでいたとでもいうのだろうか。しかし、彼女とパルキスト伯爵家には繋がりなんてまったくなかったはずだ。その辺りに関して、私は未だに腑に落ちていなかった。
「……そもそも、イルティナ嬢に対して不服なんて、まったく持って意味がわかりませんね。あなたは素敵な女性であるというのに」
「あ、ありがとうございます」
ドルギア殿下は、非常に嬉しいことを言ってくれた。
彼にそう言ってもらえるだけでも、私にとっては充分過ぎるくらいだ。
なんだか心が、とても晴れやか気分である。結果的にではあるが、彼に話して良かったということだろうか。
「あ、えっと……」
エルメラが驚くべきことを言った数日後、私はまた慈善活動に参加していた。
今回は、王家が主導して行っている慈善活動であるため、その場にはこういったことの代表であるドルギア殿下がいた。
彼は、私のことを心配そうに見つめている。私はそんなに浮かない顔をしているのだろうか。
「何かあったのですか?」
「えっと……まあ、色々とありまして」
「色々、ですか」
ドルギア殿下の善意に対して、私は曖昧な言葉を返すことしかできなかった。
アーガント伯爵家の内情に関することを話すべきではない。そう思ったのだ。
「……婚約のことですか?」
「え? どうして、わかるんですか?」
「ああいえ、その、直近でイルティナ嬢にあった変化というと、それかと思って……」
しかし私は、すぐに間抜けを晒すことになった。
ドルギア殿下の質問に、私はまんまと内情を口にしてしまったのだ。
これにはドルギア殿下も、目を丸くしている。恐らく彼にとっては、何気なく口にした言葉だったのだろう。
「……まあ、ばれてしまったら仕方ありませんね。どうせすぐ正式に発表されるでしょうし、お伝えします。実は私の婚約は破談になったんです」
「破談、ですか?」
「ええ、まあアーガント伯爵家とパルキスト伯爵家の婚約自体は続いているんですけど……」
「……妹君との婚約に、変更されたということでしょうか?」
「ええ、そういうことです」
ドルギア殿下は、私の言葉に少し考えるような仕草を見せた。
今回のような件は、少々特殊だ。やはり彼も、驚いているのだろう。
「何があったか、これ以上お聞きしてもいいものなのでしょうか?」
「大丈夫です。事情はそんなに難しいものではありませんよ。パルキスト伯爵家が、優秀な妹の方がいいと言ってきたというだけのことですから。私では不服だったみたいです」
「……アーガント伯爵家が婿を迎えるのでしょう? パルキスト伯爵家は、そんなことを要求できる立場ではないと思いますが」
「それに関しては、そうなんですよね。でも、妹が了承してしまって……」
ドルギア殿下は、至極全うな指摘をしてきた。
パルキスト伯爵家の言動は、正直言って不可解だ。どうしてあんなに強気だったのだろうか。その意味がまったくわからない。
まさか、エルメラが了承することを読んでいたとでもいうのだろうか。しかし、彼女とパルキスト伯爵家には繋がりなんてまったくなかったはずだ。その辺りに関して、私は未だに腑に落ちていなかった。
「……そもそも、イルティナ嬢に対して不服なんて、まったく持って意味がわかりませんね。あなたは素敵な女性であるというのに」
「あ、ありがとうございます」
ドルギア殿下は、非常に嬉しいことを言ってくれた。
彼にそう言ってもらえるだけでも、私にとっては充分過ぎるくらいだ。
なんだか心が、とても晴れやか気分である。結果的にではあるが、彼に話して良かったということだろうか。