皇太子に溺愛された商人
「結婚かぁ。」

私は近くにあるかんざしを見て、それを手に持った。

「小龍は、かんざしが売れる時って、どんな時だと思う?」

「さあ。お客さんが欲しいと思った時か。」

私は布で、そのかんざしを磨いた。

「出会うべき人に出会えた時さ。」


そう。お客さんが欲しいと思った時。だけでは売れない。

お客さんに見合うかんざしが見つかった時、お客さんはそれを買って行く。

引き合った時に、売れるんだ。

「人もそうだよ。私に出会うべき人が現れたら、結婚するよ。」

「へえ。出会うべき人ね。」


お父さんは、この店にかんざしを買いに来たお母さんに惚れて、毎日違うかんざしを、お母さんに届けに行っていた。


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