皇太子に溺愛された商人
好きでもないのにか。

全くだ。

私は小龍を無視して、店の奥に向かった。

好きってなに?

男を好きになった事がないから、分からない。


「ごめん。店主はいるか?」

お客さんの声がして、私は振り返った。

その時だ。

そのお客さんに釘付けになった。

高い背、涼やかな目、色気のある雰囲気。

どれも、私の目を惹いた。

「いらっしゃいませ。」

吸い込まれるように、私はそのお客さんに近づいた。

「かんざしが欲しいんだが、どんな物がいいだろう。」

「はい。どんな方に買われますか?」

尋ねると、一瞬お客さんの顔が曇った。

「あっ、ご家族の方ですかね。」

「ああ、そんなものだ。」

でも、その人のかんざしを見る目は、特別だった。
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