社長とは恋愛しません!
そう言って、英寿は行ってしまった。

悔しい。

何か言ってやりたいのに、言えない。

私は、目を押さえながら、会場を一旦出た。

「景子さん、待って。」

後から、柚季君が追いかけてくる。


「待って、景子さん。」

廊下の端で、私が涙を拭うと、柚季君は私の肩に手を置いてくれた。

「気にする事ないよ。あんなの嘘だから。」

「嘘じゃないんです。」

「景子さん?」

いつもだったら、反論するのに。

違うって、言い返してやるのに。

この件に関してだけは、何も言えない。

私が、会社を潰したのは、本当の事だ。


私との交際で、いろいろお金がかさんで、英寿さんが会社のお金を使い込んでいる事を、知っていた。

知っていて、夢の中にいたくて、何も言わなかったのだ。

私のせいで、会社が倒産したと言われても、嘘だと言えない。

「景子さん、俺の話聞いて。」
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